コラム
2026.02.02
DX推進はアジャイル開発とウォーターフォール開発どちらが良い?違いや特徴など、どちらを選択すべきか徹底比較
- アジャイル開発とウォーターフォール開発の根本的な違い
- DX推進でアジャイルが注目される理由とその限界
- ウォーターフォールが有効なプロジェクトの具体例
- 両手法をどう使い分けるべきかの判断基準
- DXにおけるハイブリッド型開発モデルの考え方
- 開発手法選定で失敗しないためのチェックポイント
01 DX推進における開発手法の重要性とは
DXプロジェクトでは、技術そのものだけでなく「どのような進め方を選ぶか」が成果を大きく左右します。開発手法の違いは、スピード・柔軟性・統制の取り方に影響し、最終的なビジネス成果にも関わってきます。ここでは、なぜDXにおいて開発手法の選定が重要とされるのかを整理します。
なぜDXでは「開発手法の選定」が成否を左右するのか
DXプロジェクトは、従来のシステム開発と比べて不確実性が高い傾向があります。市場環境の変化、技術の進化、顧客ニーズの変動など、プロジェクト開始時には想定していなかった要素が途中で顕在化することも少なくありません。
その結果、開発途中での方向転換や仕様変更が求められる場面も増えます。この不確実性に十分対応できない手法を採用した場合、完成時に市場ニーズとのズレが生じたり、プロジェクトの進行が停滞したりする可能性があります。
アジャイル × ウォーターフォールが注目される背景
近年では、アジャイルとウォーターフォールそれぞれの特性を組み合わせたハイブリッド型のアプローチも注目されています。
アジャイルは柔軟性に優れる一方で、大規模プロジェクトでは統制の難しさが課題になることがあります。反対に、ウォーターフォールは計画性に強みがあるものの、変化への対応には制約が生じやすいという側面があります。
DXのように不確実性が高い領域では、計画性と柔軟性のバランスをどう設計するかが重要になります。その文脈で、両手法を適切に組み合わせる考え方が広がっています。
02 アジャイル開発とウォーターフォール開発の違い
両手法の基本的な特徴を理解しましょう。
アジャイル開発とは|特徴・メリット・デメリット
アジャイル開発は、短期間(通常2〜4週間)で開発とリリースを繰り返す手法です。各サイクルで動くソフトウェアを作り、ユーザーのフィードバックを受けて改善します。
メリット:
- 変化する要件に柔軟に対応できる
- 早期にユーザーの反応を確認し、軌道修正できる
- 短期間で価値を提供し、成果を実感しやすい
デメリット:
- 全体のスケジュールや予算が見えにくい
- 頻繁なコミュニケーションが必要で、体制が整わないと混乱する
- 大規模プロジェクトでの統制が難しい
ウォーターフォール開発とは|特徴・メリット・デメリット
ウォーターフォール開発は、要件定義→設計→開発→テスト→リリースという順序で進める手法です。各工程が完了してから次の工程に進み、後戻りしないことが原則です。
メリット:
- プロジェクト全体の見通しが立てやすい
- スケジュール・予算が明確で管理しやすい
- 大規模プロジェクトでも統制を保ちやすい
デメリット:
- 開発途中での仕様変更に弱い
- 最終成果物が出るまで時間がかかる
- 市場の変化に対応しにくい
DXプロジェクトで求められる開発姿勢の変化
従来のシステム開発では、要件を完璧に定義してから開発するウォーターフォールが主流でした。しかし、DXでは最初から完璧な要件を定義することは不可能です。市場で試しながら学び、改善していくアプローチが求められます。ただし、完全にアジャイルにすると統制が取れなくなるため、計画性と柔軟性のバランスが重要になります。
03 DX推進でアジャイル開発が支持される理由
DXプロジェクトでアジャイル開発が有効な理由を整理します。
社内要件が変化しやすいDX領域にフィットする理由
DXプロジェクトでは、プロジェクト開始時には見えていなかった課題が開発途中で明らかになることが一般的です。たとえば、データ分析を進める中で新たな気づきが生まれたり、プロトタイプを現場に見せたら想定と異なる反応が返ってきたりします。アジャイルであれば、これらの発見を次のサイクルに反映でき、より実態に即したシステムを構築できます。
スピード重視のDXプロジェクトでアジャイルが向いている場面
競合他社より早く市場に出すことが重要な場合、アジャイルの短期リリースサイクルが有効です。完璧なシステムを時間をかけて作るよりも、最小限の機能(MVP:Minimum Viable Product)を早期にリリースし、ユーザーの反応を見ながら改善していく方が、ビジネス価値を早く提供できます。スタートアップや新規事業でのDXは、この特性と相性が良い傾向があります。
反復改善・プロトタイプ重視のDX開発のメリット
アジャイルの反復的なアプローチにより、失敗のコストを最小化できます。大規模な投資をする前に、小規模なプロトタイプで仮説を検証し、効果がないと分かれば早期に撤退できます。AI活用やデータ分析など、試してみないと効果が分からない領域では、この試行錯誤のしやすさが大きなメリットとなります。
04 DXでもウォーターフォールが適しているケース
DX推進の文脈ではアジャイルが注目されがちですが、すべてのプロジェクトに適しているわけではありません。目的や要件の性質によっては、ウォーターフォールの方が合理的な選択となるケースもあります。ここでは、ウォーターフォールが力を発揮しやすい代表的な場面を整理します。
要件が固まっている大規模システム刷新
基幹システムの刷新やレガシーシステムの移行など、要件が明確で大規模なプロジェクトでは、ウォーターフォールが適している場合があります。既存システムの機能を正確に移行する必要があり、実験的な要素が少ない場合には、計画的に進めるアプローチが安定性を確保しやすくなります。
また、複数のベンダーが関与する大規模案件では、工程や成果物を明確に定義しながら進める体制が求められるため、ウォーターフォール的な進め方が選択されることも多くあります。
法令対応や仕様が明確なプロジェクト
法令で定められた機能を実装するプロジェクトや、業界標準の仕様に準拠する必要がある場合も、ウォーターフォールとの相性が良い傾向があります。要件が外部要因によって明確に定められているため、大きな方向転換が発生しにくいからです。
金融・医療・公共領域など、高い信頼性や規制遵守が求められる分野では、工程を段階的に確認しながら進めるアプローチが重視されるケースが見られます。
既存業務システムの安定運用を重視する場合
現在安定稼働している業務システムに影響を与えるプロジェクトでは、慎重な計画と検証が重要になります。頻繁なリリースを前提とするアジャイルでは、影響範囲の管理が難しくなることもあるため、変更管理を明確に設計できるウォーターフォールの方が適する場合があります。
安定性や確実性を最優先する局面では、工程ごとに検証を行う進め方が安心材料となることもあります。
05 アジャイルとウォーターフォールの使い分け基準
自社のプロジェクトに適した手法を選ぶ基準を整理します。
プロジェクトの目的 × 不確実性の度合いで判定
不確実性が高く、試行錯誤が必要なプロジェクトはアジャイル向き、要件が明確で確実に実現すべきプロジェクトはウォーターフォール向きです。たとえば、新規のAI活用プロジェクトは不確実性が高いためアジャイル、既存システムの法令対応は要件が明確なためウォーターフォールといった判断になります。
組織の成熟度・チーム体制を踏まえた選び方
アジャイルは、密なコミュニケーションと迅速な意思決定が前提です。組織階層が深く、意思決定に時間がかかる企業では、アジャイルのスピード感を活かせません。また、開発チームとビジネス側が協働できる体制がない場合も、アジャイルは機能しにくいです。自社の組織文化や意思決定スピードを考慮して選択しましょう。
非IT企業のDXではハイブリッド型が合理的な理由
多くの非IT企業では、完全なアジャイルを回せる体制がない一方で、完全なウォーターフォールでは変化に対応できないというジレンマがあります。そのため、計画フェーズはしっかり行い、実装・改善フェーズでは柔軟に対応するハイブリッド型が現実的です。両手法の良いところを取り入れることで、計画性と柔軟性を両立できます。
06 DX推進で最適とされる「ハイブリッド型開発」とは
両手法の良いところを組み合わせたアプローチを解説します。
要件定義・計画はウォーターフォールで設計
ハイブリッド型では、プロジェクトの全体像や目指すゴールを明確に定義します。予算、スケジュール、体制、リスクなどを計画的に整理する点はウォーターフォール的です。これにより、プロジェクト全体の見通しが立ち、経営層への説明や承認も得やすくなります。ただし、詳細な機能仕様まで固めるのではなく、大枠を定義する程度にとどめます。
構築〜改善はアジャイルで柔軟に対応
計画フェーズで定めた大枠の中で、具体的な機能開発は短期サイクルで反復します。2〜4週間ごとに動くものを作り、ユーザーの反応を見て改善します。計画段階で想定していなかった課題や改善点が見つかっても、次のサイクルで対応できます。全体の方向性は維持しつつ、詳細は柔軟に調整するアプローチです。
DXの成功企業が採用する”構造化されたアジャイル”
成功している企業は、アジャイルの柔軟性を活かしつつ、属人化を防ぐ構造を設計しています。誰が何を判断するか、どのタイミングでレビューするか、どういう基準で優先順位を決めるかなどを明確化し、アジャイルでも一定の規律を保ちます。完全な自由ではなく、構造化されたフレームワークの中で柔軟に動くアプローチが、大規模なDXプロジェクトでは有効です。
07 アジャイル/ウォーターフォールを選ぶ際のチェックリスト
自社に適した手法を判断するためのチェックポイントを整理します。
自社のDX課題に対する開発手法の適合性
以下の質問で自社の状況を整理しましょう:
- プロジェクト開始時に要件が明確か、不明確か
- 市場の変化に応じて柔軟に対応する必要があるか
- 早期に市場に出すことが重要か、確実性を優先すべきか
- 試行錯誤が必要なプロジェクトか、定められた仕様を実現するプロジェクトか
これらの問いに答えることで、どちらの手法が適しているかが見えてきます。
社内のITリテラシー・人材リソースの整理
アジャイルを選ぶ場合、以下の体制が整っているか確認しましょう:
- ビジネス側と開発側が密に協働できるか
- 週次レベルで迅速に意思決定できるか
- 変化を受け入れる組織文化があるか
これらが揃わない場合、アジャイルは形骸化し、むしろウォーターフォールの方が効率的な場合があります。
外部ベンダー・DX支援企業と進める際の注意点
外部パートナーと進める場合、相手の得意な開発手法も考慮に入れましょう。アジャイル経験が豊富なパートナーもいれば、ウォーターフォール型のプロジェクトマネジメントに強いパートナーもいます。また、どちらの手法でも、外部に丸投げせず、社内の関与を明確にすることが重要です。
08 DXプロジェクトを成功させるためのマネジメントポイント
開発手法を選んだ後の成功のポイントを解説します。
アジャイルでも失敗する企業が陥る落とし穴
アジャイル = 計画不要という誤解が失敗を招きます。アジャイルでも、全体のゴール設定、優先順位付け、リスク管理は必要です。また、頻繁なコミュニケーションが前提のため、体制が整わないと「何をいつまでに作るか」が曖昧になり、プロジェクトが迷走します。「アジャイルだから柔軟でいい」という姿勢では成功しません。
ウォーターフォールでも現代DXに適応できる設計方法
ウォーターフォールでも、段階的リリースやフェーズ分割により、ある程度の柔軟性を持たせることができます。たとえば、全体を複数のフェーズに分け、フェーズ1の結果を見てフェーズ2の詳細を決めるアプローチです。また、要件定義フェーズでプロトタイプを作って検証するなど、ウォーターフォールの枠組みの中で工夫する余地はあります。
外部支援・伴走パートナーの活用で成功確率を高める
開発手法の選定や、プロジェクトマネジメントに不安がある場合、外部の専門家の伴走支援を活用することが有効です。アジャイル開発の経験が豊富なパートナーや、ハイブリッド型のプロジェクトマネジメントに強いパートナーと協働することで、自社だけでは見えなかった課題や改善点に気づくことができます。
09 まとめ|自社に最適な開発手法を選び、DXを成功へ導く
DX推進において、開発手法の選択は成否を左右する重要な決断です。
アジャイル開発は、不確実性が高く、変化に対応しながら進めるプロジェクトに向いています。新規のAI活用、データ分析、顧客向けアプリ開発など、試行錯誤が必要な領域で力を発揮します。
ウォーターフォール開発は、要件が明確で、確実性を優先すべきプロジェクトに適しています。基幹システム刷新、法令対応、既存システムへの影響が大きいプロジェクトで選ばれます。
多くの非IT企業のDXでは、計画性と柔軟性を両立するハイブリッド型が現実的です。全体の方向性は計画的に定め、詳細は柔軟に調整するアプローチにより、両手法の利点を活かせます。
重要なのは、自社のプロジェクトの特性、組織の成熟度、チーム体制を踏まえて、最適な手法を選ぶことです。また、選んだ手法を形式的に適用するのではなく、プロジェクトの状況に応じて柔軟に調整する姿勢も必要です。
開発手法の選定やプロジェクトマネジメントに不安がある場合、構造設計から実装、改善まで一貫して伴走する支援を提供する企業と協働することも選択肢の一つです。たとえば、私たちWEBEDGEのようなアプローチでは、計画性と柔軟性を両立する構造を設計しながら、段階的にプロジェクトを推進します。
本記事の情報が、皆様のDX推進における開発手法選定の一助となれば幸いです。
|
比較項目 |
アジャイル開発 |
ウォーターフォール開発 |
ハイブリッド型 |
|
適したプロジェクト |
不確実性が高い・要件が変化しやすい |
要件が明確・大規模システム刷新 |
両方の要素を持つDXプロジェクト |
|
リリース頻度 |
2〜4週間ごと |
プロジェクト完了時 |
フェーズごと |
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計画性 |
全体像は曖昧 |
詳細まで計画 |
大枠は計画、詳細は柔軟 |
|
変更対応 |
柔軟に対応可能 |
変更は困難 |
一定の範囲で対応可能 |
|
向いている企業例 |
スタートアップ・新規事業 |
大企業・金融・官公庁 |
非IT企業のDX推進 |
|
必要な体制 |
密なコミュニケーション |
明確な役割分担 |
計画と実行の両方 |
※これらはあくまで一般的な傾向であり、プロジェクトの個別事情により異なります
Question
よくあるご質問
Q
DX推進ではアジャイル開発の方が必ず良いのでしょうか?
A
必ずしもそうではありません。DXは不確実性が高い領域が多いためアジャイルが適するケースはありますが、要件が明確な大規模刷新や法令対応などではウォーターフォールが合理的な場合もあります。プロジェクトの特性に応じた選択が重要です。
Q
ウォーターフォール開発はDXには向いていないのですか?
A
ウォーターフォールは変化への対応が難しい面がありますが、安定性や確実性を重視するプロジェクトでは有効です。DXであっても、基幹システム刷新や規制対応などでは適した選択肢となります。
Q
ハイブリッド型開発とは何ですか?
A
ハイブリッド型開発とは、計画や全体設計はウォーターフォール的に進めつつ、構築や改善フェーズではアジャイル的に反復するアプローチです。計画性と柔軟性を両立させるため、多くの非IT企業のDXで採用される傾向があります。
Q
自社にどの開発手法が合うか判断するにはどうすればよいですか?
A
以下の観点で整理すると判断しやすくなります。
・要件はどの程度明確か
・市場や社内環境の変化は大きいか
・迅速なリリースが必要か
・組織としてアジャイルを回せる体制があるか
不確実性と組織体制の両面から検討することが重要です。
Q
開発手法の選定に不安がある場合はどうすべきですか?
A
手法そのものよりも「プロジェクト設計とマネジメント」が成功の鍵になります。自社で判断が難しい場合は、構造設計から伴走できる外部パートナーに相談し、客観的な視点で整理することも一つの方法です。
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執筆:WEBEDGE DX編集部
WEBEDGEは、DX推進・システム開発・AI活用支援の領域で企業のデジタル課題を解決するシステムインテグレーターです。
現場やお客様との対話で得られた知見をもとに、DX・AI・デジタル・ビジネス等に役立つ情報を発信しています。 -
監修:友田 俊輔
WEBEDGE代表・DX内製化/事業プロセス設計の実務家
DXを構造ごと任せて内製化する【DX内製化支援サービス】
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